たまごの中のひよこ 第6回
窓のふちが宙に浮いていた — かけらを前から上へ

いよいよ刷る段になって、問題が2つ見えてきました。
ひとつは、ひよこの足です。
組んだまま刷るために、ひよこには短い円柱の足を付けて、殻の底の穴からベッドに立たせていました。ところが、刷り上がったあとのたまごの中で、ひよこが自立するのはまず無理そうです。中で転がるだけなら、足はいりません。
もうひとつが、窓です。
窓の上の辺に「谷」があった
窓のふちは、割れた殻らしくぎざぎざにしていました。
上の辺は山形にとがらせてあるので、サポートなしで刷れるつもりでいました。
見落としていたのは、山と山のあいだの谷です。
3Dプリンタは、殻を下から1層ずつ積み上げます。窓の上の辺に谷があると、そこは殻が下向きにとがった歯になります。歯の先は、すぐ下が窓(空っぽ)なので、支えがないまま宙で刷り始めることになります。これが出力ミスの原因でした。
直し方はシンプルです。
- 上の辺は、左右の端から頂点まで上がるだけにする(谷を作らない)
- どの辺も、水平から45°以上にする(直した形で48〜63°)
- ぎざぎざらしさは、下の辺と、辺ごとの傾きの違いで出す
ついでに、背中に開けていたダイヤ形の小窓もなくしました。
窓をやめて、はまる「かけら」にしてみる
ここで、窓そのものを考え直しました。
ただ穴が開いているより、割れたかけらが殻にカチッとはまっているほうが、たまごらしいのではないか。

殻の穴を2段にして、外側にかけらがはまる受け、内側にひと回り小さいのぞき穴を作りました。かけらの左右には0.3mmの小さな出っぱりがあり、受けのくぼみに入ってカチッと止まります。

かけらを外せば顔が見えます。でも穴の幅は15mmで、ひよこの胴(直径20mm)は通りません。
ただ、これでも正面に大きな穴と、その裏の枠が残ります。結局は、造形のじゃまになる場所を正面に抱えたままでした。
かけらを、てっぺんへ
そこで、かけらをたまごのてっぺんに移しました。頭の部分が、ぎざぎざのひびで切れたフタになります。

正面には何もありません。見た目はふつうのたまごです。
割れ目の面は、外へ行くほど高くなる円すいにしました。方向によって傾きを少しずつ変えて、ぎざぎざを作っています。どの方向でも傾きは45°以上あるので、たまご側の切り口も、フタの裏も、サポートなしで刷れます。

フタは、とがった先を少しだけ平らに切って、そこを下にして立てたまま刷ります。かぶせると、円すい同士なので中心に寄って座り、ぎざぎざがかみ合うので回りません。
おまけで、殻の内側の天井も45°の円すいに削りました。それまで、天井のてっぺん付近は傾きがゆるく、刷るとだれやすい場所でした。
| 時間 | 重さ | |
|---|---|---|
| たまご+フタ | 36分 | 11.6g |
| ひよこ(黒目) | 39分 | 約8.7g |
ひよこは別に刷っておき、たまごを刷る途中で一時停止して、上から入れます。
これで「造形に影響しない」形にはなりました。
ところが、ここでもう一度、考えが変わります。続きは次の回で。